初めての輸出管理規制|中小製造業が輸出前に知っておきたい基本と準備

輸出を始めたい。でも、何から手をつければよいのかわからない

海外企業から製品の引き合いがあり、いよいよ輸出を始めることになった。早速、地域のJETRO(日本貿易振興機構)などに輸出相談したところ、輸出管理規制に関する多くの資料を案内された。

資料を読んでみると、「外為法」「リスト規制」「キャッチオール規制」「該非判定」など、聞き慣れない専門用語が次々に出てきます。それだけではありません。膨大な量の説明資料に加え、関連する法令や別の資料へのリンク、参考資料や付録なども数多くあり、読み進めるほどに確認すべき情報が増えていきます。

「この中で、自社に関係するのはどの部分なのか?」

「結局、何を確認し、どのような手続きをすればよいのか?」

必要な情報を探そうとしても、どこから手をつければよいのかわからず、途方に暮れてしまう担当者も少なくないのではないでしょうか。

輸出管理規制は、確かに複雑な制度です。しかし、最初から法律の細かな条文をすべて理解する必要はありません。

まず大切なのは、輸出管理とは何を確認する仕組みなのか、その全体像を理解することです。

今回は、これから輸出を始める中小製造業の皆さまに向けて、輸出管理規制の基本と、最初に取り組むべきことをわかりやすく説明します。

そもそも輸出管理規制とは何か?

輸出管理規制とは、簡単に言えば、日本から海外へ輸出する製品や技術が、軍事目的などに不適切に利用されることを防ぐための制度です。

日本では、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、安全保障の観点から輸出や技術提供を管理しています。

例えば、一般の工場で使われる工作機械や電子部品、材料などの中には、性能や仕様によって軍事用途にも利用できるものがあります。そのため、兵器そのものではなく、一般の産業用製品であっても輸出規制の対象となる場合があります。

「うちは民生用の工業部品を製造しているだけだから関係ない」

そう考えている企業でも、確認が必要になることがあります。

また、製品を海外へ発送する場合だけでなく、設計図面や製造技術などを海外へ提供する場合にも、規制が関係することがあります。

つまり、輸出管理は一部の大企業や特殊な製品を扱う企業だけの問題ではありません。

海外への輸出は、国内への荷物の発送とは違います

国内で製品を販売する場合、宅配便などを利用すれば、通常はそのまま取引先へ荷物を届けることができます。

しかし、海外への輸出はそうはいきません。

国際宅急便などを利用する場合でも、貨物は原則として税関で輸出申告を行い、必要な審査・検査を経て輸出許可を受けなければなりません。この手続きを「輸出通関」といいます。

輸出通関では、輸出が禁止されている製品が含まれていないか、また、輸出するために別途許可や承認が必要な製品については、必要な手続きが済んでいるか、提出書類がそろっているかなどが確認されます。

そのため、海外の取引先から注文を受けたからといって、国内取引と同じ感覚で製品を発送できるわけではありません。特に注意が必要なのが、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく輸出管理規制です。

輸出管理規制に違反した場合には、刑事罰や輸出禁止などの行政制裁の対象となる可能性があります。また、違反の内容によっては行政指導などを受けることもあります。こうした事態になれば、企業の信用が損なわれるだけでなく、海外取引の継続や事業活動そのものに大きな影響を及ぼしかねません。

輸出を行う企業は、輸出管理に関係する法令を正しく理解し、規制に従って必要な確認や手続きを行うことが求められます。

とはいえ、初めて輸出に取り組む企業が、複雑な法令を最初からすべて理解することは容易ではありません。

そこで、まず押さえておきたいのが、次の3つの確認事項です。

輸出管理の基本となる3つの確認事項

① 何を輸出するのか? ― 製品・技術の確認

まず、輸出する製品や技術が、法令で定められた規制対象に該当するかを確認します。

これを「該非判定(がいひはんてい)」といいます。

製品の名称だけで判断するのではなく、材質、性能、仕様などを確認し、規制対象に該当するかどうかを判定します。

例えば、同じ種類の工業部品でも、材料を含む仕様や性能の違いによって判定結果が異なる場合があります。

ここで重要なのは、「規制対象ではない、該当しない」と判断した場合でも、その判断の根拠を説明できるようにしておくことです。

該非判定の具体的な進め方については、次回のコラムで詳しく説明します。

② 誰に、何のために輸出するのか? ― 取引先・用途の確認

自社の製品がリスト規制に該当しなくても、輸出先や用途、取引先などによっては、輸出許可が必要になる場合があります。これを「キャッチオール規制」といいます。

キャッチオール規制とは、リスト規制の対象外であっても、大量破壊兵器や通常兵器の開発・製造などに利用されるおそれがある貨物や技術について、一定の条件のもとで輸出を規制する制度です。

例えば、農業用や測量用のドローン、あるいはその関連部品が、軍事目的に転用されることがわかっている場合には、輸出許可が必要になる可能性があります。

また、経済制裁によって輸出が禁止・制限されている国や地域、制裁対象の企業・団体との取引には、別の規制が適用される場合もあります。経済産業省が公表する「外国ユーザーリスト」も、取引先を確認する際の重要な情報です。ただし、掲載企業との取引が一律に禁止されるわけではありません。

このように、輸出管理では製品そのものだけでなく、「どこの国へ、誰に、何のために輸出するのか」を確認することが重要です。

③ 輸出してよいか? ― 必要な許可と出荷前の確認

①の該非判定と②の取引先・用途の確認が終わったら、その結果から、経済産業大臣の輸出許可が必要かどうかを判断します。

例えば、該非判定の結果、自社製品がリスト規制に「該当」した場合は、原則として輸出許可が必要です。

一方、リスト規制に「非該当」であっても、軍事転用のおそれがあるなど、キャッチオール規制の許可要件に該当する場合は、許可が必要になります。

つまり、「製品が規制対象に該当するか」「輸出先や用途に規制上の問題がないか」を確認することで、許可が必要かどうかを判断するのです。

許可が必要な場合は、経済産業省に申請し、許可を取得してから出荷します。許可が不要と判断した場合も、その根拠を記録しておきます。

最後に、実際に発送する製品や輸出先、取引先などが、確認した内容と一致しているかをチェックします。

輸出管理は、誰が責任を持って行うのか?

ここで、中小企業の経営者にぜひ知っておいていただきたいことがあります。

それは、輸出管理の責任は、輸出する企業自身にあるということです。

経済産業省やJETROは、制度の説明や情報提供、相談対応などを行っていますが、個々の製品について、輸出者に代わって該非判定を行うわけではありません。

また、通関業者や物流会社に輸出手続きを依頼しても、輸出管理上の判断まで、すべて任せられるわけではありません。

自社で必要な確認を行うだけでなく、輸出通関で判断の根拠となる資料の提出を求められた際に、なぜ輸出できると判断したのかを説明できるよう、該非判定の結果や輸出許可が不要と判断した根拠などの関連資料を社内で適切に保管しておく必要があります。

経営者がすべての法令を理解し、一人で判断する必要はありません。

技術担当者が製品を確認し、営業担当者が取引先や用途を調べるなど、社内で役割を分担することが大切です。輸出管理では、誰が何を確認し、誰が最終判断するのかを明確にしたうえで、確認結果や判断の根拠を記録・保管し、継続して管理できる仕組みを整えることが重要です。

輸出管理は、難しい法律を理解するだけでなく、必要な確認を確実に行い、その結果を記録し、継続して管理していくことが重要なのです。

次回は、輸出管理の最初の重要な作業となる「該非判定」について、具体的な確認方法や判定書の作成について解説します。