越境取引でのコミュニケーションの壁は、言語の壁だけでない!③

スペイン企業|一般消費者へのマーケティング・リサーチ事例

言葉と文化のハードルを越え、円滑な越境ビジネスを支援しているエーワン代表の畠山です。

2023年からスペインのパエリア用スープ専門店である「エル・パエラー」の日本市場進出のための活動を支援しています。

本ブログでは、スペインのパエリア用スープ専門店である「エル・パエラー」の日本進出での「コミュニケーションの壁」がどこにあったのか、またどのようにその壁を解消するお手伝いをさせていただいたのか、解説いたします。

第3回の本記事では、展示会出展の前後に、一般消費者へのマーケティング・リサーチの目的で開催した試食会について解説します。

食材は食べてもらわないとわからない!?

海外の食材には、日本の一般的な食文化には馴染みがないものが多くあります。

特に、食材だけ販売したとしても、「日本の食材と合わせても、日本人が美味しくたべることができるか?」という点がわかりません。

そこで、海外の食材への理解を深めるために、その食材の試食会を行うという方法があります。

スペインのパエリア用スープ専門店である「エルパエラー」も、今回日本で初めての展示会出展となるFOODEXJAPANの出展5日前に、急遽試食会を開催することになりました。

試食会チラシ
試食会の様子

また、展示会の会期が終わったあとには、「野外で食べるスペイン本場パエリア」の味がわかるようなイベントを開催しました。

今回試食会を急遽開催した理由としては次の理由があります。

①日本市場に投入するための試作品調査

エルパエラーのパエリア用スープはスペイン人が好む味に味付けされているため、薄味を好む日本人に対しては、若干塩加減が濃いのではという課題がありました。

そこで、今回日本の展示会に出展するため、塩加減を調整した試作品を展示会用に製作しました。

しかし、展示会には一般消費者ではなくバイヤーが来場するため、「この味は本当に日本人が好む味なのか」という質問がバイヤーからでてくることが予想されました。

そこで、展示会前に一般消費者約20名に参加いただき、エルパエラーのパエリア用スープの塩加減について調査を実施しました。

<塩加減に関するアンケート回答抜粋>・あまり濃くなくてよかったです。・具材によって違いはあるものの、どれも丁度よい加減でした。・日本の既成のパエリアスープに比べて、自然なシーフード感のあるほどよい塩味が良かったです。・ベジタブルのどちらかが塩気が強いかなと思いましたが、初めてだからそう感じたのかもしれません。シーフードやミートは特に塩が強いと感じませんでした。

 展示会出展前に、「日本の一般消費者にも受け入れられる塩加減である」ことが伝わるコメントを一定数集めることができたのは、試食会を開催した大きな成果となりました。

②日本人とパエリアの関係についてアンケート

展示会に来場する日本人バイヤーが浮かぶ他の質問として考えられたのは「日本人が家庭のキッチンでパエリアをつくるニーズがあるのか?」という点でした。

そこで、この試食会では日本人のパエリアへのイメージや好み等についてもアンケート調査を実施しました。

日本人が「パエリア」といえばシーフードがNo1でした。また、パエリアを自宅でつくる機会はなかなかなく、理由としては「作り方がわからない」でした。

事前の試食会で得られたアンケート結果については、展示会当日に来場したバイヤーに対し、エルパエラーのパエリア用スープが日本の一般消費者からニーズがあるという説明材料になりました。

③日本の食材や飲食シーンにあわせたレシピ提案

展示会の前に開催した試食会において、「パエリアをどんなシチュエーションで食べたいか」という質問では、「大人数でみんなとワイワイ食べたいとき」という回答が多く寄せられました。

そこで「コロナも一段落、やっぱり友達とワイワイBBQしたい!」というシチュエーションを想定し、展示会の後に改めて試食会を開催することになりました。

展示会後の試食会では、日本の食材や飲食シーン…今回の想定は「友達とワイワイBBQ」とし、エルパエラーのパエリア用スープをつかったパーティ用レシピの開発と試食を実施しました。

この試食会の参加者からは次のような感想がありました。

・今まで食べてきたパエリア(サフランライスの豪華シーフードパエリア)とは全然別物だと感じた・やはりスペインで食べられている豪華じゃないパエリア(米が主役)が美味しい・シーフードの風味が深く米に染み込んでいて、とても美味しい・「エルパエラー」のスープは常温の缶に入ってるから、キャンプ場に持って行って手軽に調理できそう!

特に最後の「キャンプ場に持って行って手軽に調理できそう!」という声は、当初家庭で調理することを想定していたエル・パエラーが日本市場に進出するにあたって、「キャンプのお供になる」というあらたな用途を発見することにつながったのです。

チキンと野菜の具沢山パエリア
シーフードパエリア

展示会後、野外で開催した試食会でつくったパエリア

今回実施した試食会で得た感想は、全てエーワンで英訳し、エルパエラーに報告しました。

本場スペインではなかなか考えつかない「日本ならでは」のスープの使い道や、日本人がエルパエラーがつくる「パエリア用スープ」のどこにベネフィットを感じるか、よいマーケットリサーチの場となりました。

越境ビジネスでのコミュニケーションギャップ解消には、その国の文脈に沿った説明と材料揃えが必要

今回エーワンでは、日本人に馴染みのない「パエリア用スープ」の日本市場進出の支援を実施いたしました。

日本と海外では、言葉だけでなく文化的背景も、ビジネス環境も全く異なります。

そこから生じるコミュニケーションギャップを乗り越えるには、営業する国の商慣習等に合わせた説明の材料をそろえ、その国の文脈に沿った説明を丁寧にしていかなければ、本当に「伝えたいことが伝わった」とはなりません。

エーワンでは、海外営業の視点と日本のビジネス環境両方の視点を持ち合わせながら、日本と海外での越境取引で生じるコミュニケーションギャップの解消を、伴走しながらお手伝いいたします。