越境取引でのコミュニケーションの壁は、言語の壁だけでない!①

スペイン企業の日本市場進出支援事例紹介

言葉と文化のハードルを越え円滑な海外とのビジネスをサポートする海外営業向けの支援サービスを展開しています。

主に英語と日本語でのコミュニケーションを支援していますが、お客様からはこんなお困りごとをよくお聞きします。

・日本語でつくった契約条件を英語に翻訳して送ったものの、こちらの希望する条件がうまく伝わらない
・機械翻訳で作った英文を送ったが、伝えたいことがうまく伝わらず、返事が来なくなってしまった。

みなさまも、外国人の方と取引をするときに、このようなトラブルになったことはありませんか。

日本人同士で日本語で行うコミュニケーションでも「伝えたいことが伝わらない」ということはよくあるものです。

言語も違う、文化も違う越境取引では、さらにコミュニケーションが複雑になってしまうのです。

私は、言語や文化的背景が異なることにより発生する、複雑にからみあったコミュニケーションの結び目を一つひとつ解きほぐし、お客様の越境取引が円滑に進むためのお手伝いをしています。

現在、スペインのパエリア用スープ専門店である「エル・パエラー」の日本市場進出のための活動を支援しています。

これから3回にわたり、パエリア用スープ専門店である「エル・パエラー」の日本進出での「コミュニケーションの壁」がどこにあったのか、どのようにその壁を解消するお手伝いをさせていただいたのか、解説いたします。

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スペインのパエリア用スープ専門店 エルパエラー

公式Instagram(日本語)
https://www.instagram.com/elpaeller.japan/

El Paeller日本語サイト
https://aone-global.com/elpaeller

公式Instagram(英語)
https://www.instagram.com/elpaeller/

公式サイト(英語)
https://elpaeller.com/en/

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越境取引のコミュニケーションは、言葉を忠実に翻訳しただけでは正しく伝わらない

みなさんは「パエリア」を食べたことがありますか?

パエリアとは、スペイン・バレンシア地方の郷土料理で、米と魚介類や野菜、豚肉や鶏肉を煮込んだ炊き込みご飯です。日本の洋風居酒屋でも「パエリア」はたいていメニューにあるので、みなさんもイメージしやすいと思います。

以上がパエリアの一般的な説明ですが、ではみなさん、パエリアとはどのような料理を想像しますか?実は、スペイン本場のパエリアと、日本で親しまれているパエリアはかなり違いがあるのです。

こちらの写真は、エーワンが支援しているエルパエラーのパエリアスープを使ってつくった、スペインで一般的に食べられているパエリアです。

あれ?ご飯の上にエビとか、ムール貝とか、いろんな食材が乗っていないの…?ちょっと寂しいなあと思った方もいるかもしれませんね。

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元祖パエリア バレンシアンパエリア

みなさんが「パエリア」といえば、黄色のサフランライスに、エビやムール貝などがてんこ盛りになった海鮮パエリアを想像するのではないでしょうか。

スペインで食べられているパエリアは、あくまでも米が主役です。お米に染み込んだスープや具材のだしの味を楽しむのが、本場スペインの「パエリア」なのです。

日本ではどちらかというと、米に染み込んだ味よりかは、上にのった様々な海鮮をお米とともに楽しむ料理になっています。

「パエリア」はスペイン発祥の料理ですが、日本の「パエリア」は独自の発展を遂げて、スペイン本場のパエリアとちょっと違うものになっているのです。

海外食材の日本進出の課題〜日本人に馴染みのないパエリアスープを広めるには?

今回、日本進出支援をしているエル・パエラーの主力商品は「パエリア用のスープ」です。スペインではもちろん、世界各国で販売されている人気商品です。

しかし、日本市場には未進出です。「日本市場でパエリアが受け入れられるか全く未知で、展示会に出展して日本人からの反応を見て見たい」というご相談をいただいてからご支援が始まりました。

私が今回依頼をいただいて一番頭を悩ませた点は、「パエリア用スープを日本でどうやって使えばいいのか」という点です。

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マスターシェフのラファエロ・マルゴス
伝統の調理法である薪木の火で30万食以上のパエリアを作ってきたスペイン唯一のパエリアシェフ

エル・パエラーはスペインの伝統的なパエリアの作り方である薪火による調理にこだわり、スモーキーな薫りや色が移ったスープを世界で初めて商品化した、スペインの会社です。

エル・パエラーの担当者から言われたこのパエリア用スープの一番のウリは、「薪火のスモーキーな香りがスープに溶け込んでいる」ことでした。

本場スペインではパエリアを炊くときに薪火を使うことから、スペインでのパエリアは「薪火のスモーキーさ」が美味しさを左右する重要な点です。

しかし、薪火で炊くのは本場スペインでもなかなか難しいので、家庭でも「薪火のスモーキーさ」が再現できることが、このスープのUSP(Unique Selling Proposition=自社の商品やサービスの持つ、独自の強み)なのです。

しかし、日本では「薪火でパエリアをつくる」という習慣がそもそもありません。したがって、日本人に「薪火で焼いたパエリアを自宅のキッチンで作ることができるスープです」と、エルパエラーがスペインで言っていることをそのまま伝えても、その良さが理解できません。

さらに、日本においてのパエリアは「たくさんの海鮮とともに味わう料理」になっているので、スープのだしについてもそこまで重視されていません。

したがって、この商品を「パエリア用のスープです」として販売しても、日本の消費者にとっては使い方がわからず、結果日本市場で広まらないことが予想されます。

売る国の文化や慣習にあわせ、足りない要素や文脈を揃えて初めて伝わる

今回のエルパエラーの場合、日本進出にあたっては、次の点を補足する必要がありました。

①スペイン本場でのパエリアの食べ方:スペインにおいての「パエリア」とは、薪火で炊き出すためにスモーキーな風味があり、米にしみこんだスープの味を楽しむ料理であること

②エルパエラーのパエリア用スープを日本の食材とどのように合わせればおいしくなるか、日本の家庭にあるような調理道具と調味料でできるレシピを提案すること

エルパエラーの「パエリア用スープ」はすでに世界各国で販売されており、PR資料も豊富にあります。

しかし、このスープを日本市場に投入するには、これまでエル・パエラーが他国でつかってきたPR資料を、そのまま日本語に翻訳しただけでは、日本市場における需要喚起はできません。

日本市場に合わせた様々な提案活動や啓蒙活動をしながら、日本の消費者の興味関心を引き出し、新しい価値観をつくっていく必要があるのです

新しい価値観をつくるには、広報PR視点でのアプローチが有効

今回のエルパエラーのように日本でなじみのない食材の場合、広告宣伝にお金をかけたとしても、日本人にその食材のよさを理解してもらえる土台がないため、広告宣伝の効果がでない可能性があります。

そこで、まず日本の人々に理解してもらい、信頼関係を築き、最終的にエル・パエラーのスープのファンになってもらうためのコミュニケーション活動である、広報PRの視点を用いて支援をすることにしました。

日本の食品総合展示会「FOODEX JAPAN」に出展

今回のエルパエラーの場合、日本市場進出の第一歩として、東京ビックサイトで開催された食品専門展示会「FOODEX JAPAN 2023」に出展しました。

ここではエル・パエラーのスープを使い、ブースで本場スペインでのパエリアの作り方を実演したほか、パンフレットを中心としたPRマテリアルの作成と配布、スペインゾーンで日本人のバイヤーの皆様にむけてプレゼンテーションをいたしました。

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FOODEX2023に出展したときの様子

試食会で一般消費者へのマーケティング・リサーチ

この記事を読んでいる皆さんも、「パエリア用スープって…どう使えばいいの?」「日本の食材と本当にあうの?」と思われたのではないでしょうか。

そこでエル・パエラーのシェフに提案し、展示会出展に先立って、都内で一般消費者に向けたパエリア試食会を開催しました。

試食会当日は20名以上の方にお越しいただき、大変盛り上がる会になったとともに、エル・パエラーとしても日本市場におけるターゲットリサーチの機会となりました。(試食会については、詳しくは次々回の投稿で解説します。)

帰国後、この試食会でのアンケートをもとに、日本向けにスペイン向けより減塩したバージョンを早速開発することになりました。

次回は、エルパエラーが食品総合展示会であるFOODEX2023に出展した際に取り組んだ活動についてご説明します。お楽しみに!